美術館照明

美術館の照明計画をしてるといつも思うことがある。まず美術館照明では次の3つの事にたいして気をつけなければならないとなっている。ひとつ目は、作品の保護。これは、照明によって作品が劣化することを防ぐ意味でUV/IRカットや調光などで作品を守る事である。二つめが鑑賞者の快適性。作品に対する影や映りこみ、そして光むらを無くし見る側にとって気持ちよさを追求するものである。三つめが空間の快適性。エントランスから展示空間までの光のシークエンスを考え気持ちよい空間を創りあげるのことである。以上がよく使われるミュージアムライティングの三つの要素と言われているものである。しかし、これ以外に一つ重要な事が忘れられていると思うのである。それは、作者の快適性である。作者がどういう光の中で作品を見ることを想定してつくり上げたのかも重要になってくると思うのである。もしかしたら自然光のなかで見てもらうことを想定していた作品かもしれないのに薄暗い照明で照らされているかもしれないのである。そう考えると作品の保護としての作品展示照明は、本来の作品の姿ではないのかもしれないのである。しかし、貴重なものを後世まで残したいと想う美術館側の考えも当然のことである。この矛盾をいかに納得させるかがこれからの美術館照明の課題かもしれない。